最高裁判所第一小法廷 昭和33年(あ)1893号 決定 1959年3月19日
主文
本件上告を棄却する。
理由
被告人両名の弁護人植木敬夫、同中田直人、同竹沢哲夫の上告趣意第一点は、違憲をいうが、その実質は、原判決は、訴因において明示された職務行為の根拠と内容から離れ、これと異る職務行為の根拠と内容とを認定したという単なる訴訟法違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、原判決は、被告人等は王子警察署長の解散命令により判示校内の集団又は判示道路上の集合者を解散せしめつつあった判示巡査に対し暴行を加え公務の執行を妨害した事実を認定判示しているから、本件公訴にかかる訴因と何等異るところはない。(なお、公務執行妨害罪の訴因として職務行為の根拠となるべき法令を示すことは必要とは解されない。)
同第二点は、違憲をいうが、その実質は、原判決は警察官職務執行法五条の解釈、適用を誤ったとの単なる法令違反の主張に帰し、同第四点は、事実誤認、単なる法令違反の主張を出でないものであって、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。なお、原判決挙示の証拠によれば、所論原判示の(一)ないし(四)の認定を是認することができるし、その他原判決の前記第五条の解釈、適用に誤ありと認められないから、本件につき刑訴四一一条一号、三号を適用すべきものとは認められない。
同第三点は、判例並びに憲法違反をいうが、本件記録並びに原判決書によれば、原審は、検察官又は弁護人の申請に基き、被告人両名および弁護人立会の上、本件犯行現場およびその附近の検証を行い、弁護人立会の上証人武田勲、同黒沢武雄の尋問および写真三葉の取調をなし、被告人李鐘活および弁護人立会の上証人尹徳昆、同李景煥を尋問し、なお、職権で訴訟関係人出席の上本件犯行の当日現場で撮影したフィルムの映写を実施し且つ原判示事実認定に右原審の検証調書を証拠としていること明らかであるから、所論は、その前提を欠くものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
よって、同四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)